ダンスが大衆化される時代へ

日本人は本来、恥ずかしがり屋で人前で何かをすることがあまり得意ではないです。一部の人だけが前に立ち、それを周りで感心している割合の方が多い人種なのです。例えば、人前で踊るということに関しても、盆踊りなど大人数で踊る分には参加しますが、参加する人数が少なくなると躊躇することが多いのです。そのため、ダンスというものは得意な人がするもの、興味がある人がするものと感じ、ほとんどの人は見る側に徹してきました。社交ダンスやヒップホップダンスなど、特に技術が必要だと感じると尚更です。

しかし、近年その状況が変わりつつあります。ダンスは広く一般的になってきているのです。その理由は幾つかありますが、まずは生活が安定して趣味の時間が増えた人が多くなったことです。ダンスをする余裕が生まれ、ちょとしたきっかけで始めるなどしてダンス人口が増えることで、さらにダンス自体が身近になっていくという拡がりがありました。

次にダンスの浸透度合いが高まったことです。テレビの普及で各家庭がテレビを持ち、制作側も様々な発信をしてきましたが徐々にその内容がバラエティーに富んできました。歌番組ではアイドルがダンスを披露し、教育番組ではリズムに合わせてダンスの時間ができました。そして、90年代以降ではダンスの自体の企画番組も数々出てきました。社交ダンスを踊れるように練習したり、ダンス大会を放送したりと内容は様々ですが、ダンスを見る機会が増えたことでダンスに対する抵抗は薄れ、より身近に感じられるようになってきました。

最後にダンス人口の低年齢化があります。ダンスがより身近になってきた証拠に、大人が多く楽しむものであった印象のダンスですが、最近では未就学前からヒップホップダンスなどをやっているなど子供時代からダンスを始める人が増えています。小さなうちから始めることでより大衆化されてきているのです。時間をかけて身近になってきたダンス文化ですが、今ではコミュニケーションのツールとして授業に取り入れられるなどもしています。ダンスはさらに日本人にとっても身近な存在になっていきそうです。

ダンスと音楽は切り離せない

私が20年以上ダンスをやってきた中で、この話は非常に印象深く、実際に目にしたわけではないのですが、聞いて以来10年以上経った今でもハッキリ覚えている話なんです。当時10代後半だった私は、たまたま偶然、当時教えて頂いていた英語の先生とストリートダンスの話になりました。先生も若い頃、日夜ストリートダンスに明け暮れ、趣味が高じて渡米までしてしまったそうです。英語教師となった彼はその後も趣味としてダンサーを続けていたそうですが、自分の家の近所の老人ホームへボランティア活動のような事もしていたそうです。

ある時、その老人ホームへバンド演奏を呼んで、演奏会を開く機会があったそうで、先生もその日ホームへお年寄りのお世話をしに行ったようです。演奏会は大変盛り上がったようですが、ホームのお年寄り中には数名、耳の聞こえない方もいたそうです。その耳の聞こえないお年寄り達は会場に集まったものの、演奏そのものが聴こえないので、どこかつまらなく寂しそうにしていました。それに気付いた先生が、その耳の聞こえないお年寄りの傍に行き、バンド演奏の音楽に合わせて体でリズムを取り始めました。

耳の聞こえないお年寄り達は、じっと先生を見つめていたそうです。バンド演奏に盛り上がる他のお年寄りの傍らで、表情は変えずにじっと自分を見つめる耳の聞こえない人達。先生はとっさにロックダンス(ストリートダンスではオールドスクールに分類される非常にコミカルなダンス)を踊ったそうです。暫く踊っていると、じっと見つめていたお年寄りの表情が次第に柔らかになり、笑顔で先生を見ていたそうです。その中のひとりが、先生の踊るダンスのリズムに合わせて手拍子を始めました。それにつられて他の聴こえなかったはずのお年寄りも同じように手拍子を始めたそうです。ホームのヘルパーの方は、そのお年寄り達が急に耳が聞こえるようになったと勘違いした程だったそうです。しかし、きっとそのお年寄り達には音ではない何かが聞こえていたのでしょう。

ヒップホップはどこで生まれたのか

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今では有名になった音楽ジャンルのひとつ、ヒップホップですが、実はこの音楽ジャンルは生まれてまだ半世紀も経っていないのです。 ヒップホップが生まれたのは、1970年代初頭のアメリカ、ニューヨークはサウス・ブロンクス地区です。 ブロンクス地区は、元々ユダヤ人自治区といったイメージがあったくらいユダヤ人の多い地区でしたが、1940年代にブロンクス地区の最南端部をブロンクス一の貧民窟であるとした社会福祉士のグループが、その地域をサウス・ブロンクス地区と名づけて以来、荒廃が続き、1970年代から80年代には戦争直後か紛争地帯のような惨状となっていました。大家の逃げ出した廃屋では火災が相次ぎ、またこの地域を縄張りとするマフィアによるヘロインの密売行為も行われていました。

このような悲惨な現状で、当時大流行していたディスコに遊びにく余裕のない大勢の貧困のアフリカ系アメリカ人の若者たちが、それぞれ家からターン・テーブルやレコードを持ち寄り、公園でパーティーをするようになったのがヒップホップの最初の形です。 当時ヒップホップには三人のカリスマが存在しました。その中の一人、後にヒップホップのゴッドファーザーと言われるようになるアフリカ・バンバータによって、”ヒップホップ”という名前は名づけられたと言われています。

このような社会背景によって生まれた音楽ですから、ヒップホップの内容はストリートでの過酷な現状や黒人として生きること、など当時の若者の直面していた困難に対するメッセージ性の強いものから、若者らしいポップなものまで様々です。 しかし、この音楽を通じて自分の思いや考えを伝えていく、というヒップホップの在り方によって、当時の鬱屈していた若者たちが麻薬や暴力に走ること無く、音楽によって自己実現、自己表現を成し遂げていくという道が生まれました。 「黒人差別」というアメリカ特有の複雑な問題が解決するにはまだまだ困難が多く残っていましたが、それでもこのヒップホップという音楽によって多くの若者達が腐ることなく、自分の未来を切り開いていけるようになっていったのです。

自宅でもヒップホップダンスに挑戦できる

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どんなダンスにも基本のステップや体の使い方があります。初心者の場合はやはり基本を学ばなくては振り付けを覚えてもかっこよく踊ることは難しいです。ダンス教室に通う時間はないけれど、ヒップホップダンスに挑戦したいという人は市販されているヒップホップダンスレッスンのDVDや動画のレッスンサイトを見て基本ステップを身につけると良いでしょう。動画サイトは無料で見ることができかなり本格的なステップまでしっかり教えてくれます。以前はそんなに動画サイトがありませんでしたが、体育の授業で、ヒップホップダンスなどを教える学校が増えてきていることから生徒も先生も上達できるように動画サイトが増えているといえます。

またダンスエクササイズも流行していて、ダイエット目的でダンスを始める人も多いです。ダンスは体の筋肉をしっかり使う事ができますので、シェイプアップに最適で、そして音楽に合わせて楽しく行えるのでスポーツというよりも楽しんでエクササイズできる点が魅力的です。動画サイトでは簡単なステップを組み合わせた振り付けもあり、1曲踊れるようになるとさらに他の振り付けにも挑戦したくなってきます。ヒップホップのステップは、忙しそうなステップが多く感じられますがしっとりと踊ることができるものもありますし、ゆっくりめのステップを組み合わせた振付けもあります。色々検索してみて踊ってみたいなと感じたものを練習してみましょう。

振り付けを覚えると、自分の好きな曲に合わせて踊ることもできてより楽しめます。動画サイトはゆっくりと教えてくれるものが多いので、実際に教室でレッスンを受けているのと同じような感覚で受けることができますし、自宅でも練習しやすいように考えられているものも多いです。ヒップホップダンスは腰や足に負担のかかりやすいステップもあるので腰痛がある人や膝痛のある人はダンスの際注意が必要です。レッスン前後のストレッチも欠かさないで行いましょう。

ヒップホップダンスって?

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厳密に言うと、ヒップホップダンスというダンスは存在しないかもしれません。というのも、ヒップホップというジャンルのダンスが存在するのは事実ですが、ヒップホップダンスとはどこからどこまでがヒップホップダンスだという定義が難しく、逆にヒップホップダンスでないものは何かという定義も難しいのです。

おおざっぱにいうと、ヒップホップダンスはストリートダンスのカテゴリーではニュースクールに分類され、一般的には音楽としてのヒップホップに合わせて踊るため、ヒップホップダンスというジャンルで呼ばれています。同じニュースクールのカテゴリーとしては、ハウスダンスなどが含まれます。この、ニュースクールのカテゴリーの対になるものが、オールドスクールと呼ばれ、ブレイクダンス、ポップダンス、ロックダンスなどのジャンルが含まれます。

これらのジャンルのルーツも、そのダンスがどのような音楽に合わせて踊るかという違いが根本的にありますが、音楽の違いがダンスの動きの違いも生み出しているのです。ただ近年のストリートダンスの発展は目覚ましく、他ジャンルのダンスの動きや、新しい動きを取り入れたりとジャンルの垣根を超えた、フリースタイル感覚を備えたダンサーも多く存在しています。その中でもヒップホップダンスはフリースタイル要素の強いダンスであり、様々なルーツの動きが複合的に含まれるため、ダンスの動きだけで定義するのは非常に難しいのです。

また音楽としてのヒップホップも年代や地域によって様々なため、それに合わせて踊るヒップホップダンスも曲の違いで印象がガラッと変わるものです。しかしながら、逆に言えば基本さえ身につければ様々な要素を取り入れたりアレンジしたりと表現の幅を広げることが出来ると思います。あくまでヒップホップっぽさを追求するのも良いと思いますし、他ジャンルを学んでヒップホップにアレンジしてみるのも良いと思います。また見る側としても、様々なジャンルをヒップホップと見比べてみると面白いかもしれません。